「いってきまーす」
台所に向かって声を出して、私は家を出た。
朝が弱い上に、最近は体がどうも重く感じられて。
まだ1日が始まったばかりだというのに、私のやる気はゼロに近かった。
あんまりにも状態がひどければ休んだりしないこともないけど…。
今は高3、そして受験の年。
加えてテストまで2週間近く前とくれば、そうそう休んでばかりもいられない。
家近くのバス停に立ち、時計を見る。到着予定時刻の2分前。
さっき、逆方面のバスが目の前を通り過ぎて行ったから、もう少しで来るかな。
──なんて思っていたのに。
(なんで来ないのよ〜っ!)
朝のバスの時間帯は、本当に当てにならない。
日によって違う。正確に言うと、その日の交通量や乗車率によるけれど…まぁそんなことはどうでもいい。
私が少し早く来た努力も、水の泡となってしまった。
が、文句を言っても仕方ない。今はいつもの電車に乗れるだけで十分って思わないと。
バスを降りて、猛ダッシュ。
最近できたエスカレーターのおかげで、ホームにすでに着いていた電車に飛び乗ることができた。よかった…間に合って。
(なんだろう…なんか体が……)
電車に乗って15分ほど経った頃だろうか。
つり革につかまっていた私は、徐々に自分の体を自分で支えられなくなっていくのを感じていた。
とにかく立っていられない、座れるものなら座りたい。
目の前に座っているサラリーマン見やると、目を閉じて眠っていた。
その周りには年の近い男の子が音楽に耳を傾けていたり、熱心に読書をしている女性がいる。
何度か話しかけようかと思ったけれど、私はためらっていた。
「次は──」
扉が開いたあとで再び閉まり、駅員によって次の駅名が告げられる。
(あとひとつ…)
降りる駅は次。あと少しなんだから、がんばらないと…。
私が降りる駅は、地下鉄の乗り換えの駅として多くの人が利用する。
たくさんの人が降りる勢いに乗って、私はなんとか電車の外に出ることができた。
でも、そこまで歩くのが限界。かと言って、道のまん中に突っ立っているのも危険だ。
私は1番近い柱まで歩くことにした。乗り降りする人の邪魔にもなりにくいだろうし、何かに掴まっていたい。
体を柱に預け立っているのが精一杯で、私はついにそこから動くこともできなくなった。
そんな私の耳に、聞こえてきた声は──
→1.私の名前を呼ぶ声だった。
→2.心配そうな声だった。