● 「恋心を目覚めさせる方法」 --- 異 変 ●

「いってきまーす」
 台所に向かって声を出して、私は家を出た。

 朝が弱い上に、最近は体がどうも重く感じられて。
 まだ1日が始まったばかりだというのに、私のやる気はゼロに近かった。

 あんまりにも状態がひどければ休んだりしないこともないけど…。
 今は高3、そして受験の年。
 加えてテストまで2週間近く前とくれば、そうそう休んでばかりもいられない。

 家近くのバス停に立ち、時計を見る。到着予定時刻の2分前。
 さっき、逆方面のバスが目の前を通り過ぎて行ったから、もう少しで来るかな。




 ──なんて思っていたのに。
(なんで来ないのよ〜っ!)
 朝のバスの時間帯は、本当に当てにならない。
 日によって違う。正確に言うと、その日の交通量や乗車率によるけれど…まぁそんなことはどうでもいい。

 私が少し早く来た努力も、水の泡となってしまった。
 が、文句を言っても仕方ない。今はいつもの電車に乗れるだけで十分って思わないと。
 バスを降りて、猛ダッシュ。
 最近できたエスカレーターのおかげで、ホームにすでに着いていた電車に飛び乗ることができた。よかった…間に合って。




(なんだろう…なんか体が……)
 電車に乗って15分ほど経った頃だろうか。
 つり革につかまっていた私は、徐々に自分の体を自分で支えられなくなっていくのを感じていた。
 とにかく立っていられない、座れるものなら座りたい。

 目の前に座っているサラリーマン見やると、目を閉じて眠っていた。
 その周りには年の近い男の子が音楽に耳を傾けていたり、熱心に読書をしている女性がいる。
 何度か話しかけようかと思ったけれど、私はためらっていた。

「次は──」
 扉が開いたあとで再び閉まり、駅員によって次の駅名が告げられる。
(あとひとつ…)
 降りる駅は次。あと少しなんだから、がんばらないと…。




 私が降りる駅は、地下鉄の乗り換えの駅として多くの人が利用する。
 たくさんの人が降りる勢いに乗って、私はなんとか電車の外に出ることができた。

 でも、そこまで歩くのが限界。かと言って、道のまん中に突っ立っているのも危険だ。
 私は1番近い柱まで歩くことにした。乗り降りする人の邪魔にもなりにくいだろうし、何かに掴まっていたい。


 体を柱に預け立っているのが精一杯で、私はついにそこから動くこともできなくなった。
 そんな私の耳に、聞こえてきた声は──

→1.私の名前を呼ぶ声だった。
→2.心配そうな声だった。
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