● 「恋心を目覚めさせる方法」 --- 思いがけない連絡 ●

 最寄の駅までお母さんに迎えにきてもらい、そのまま病院に直行した。
 私が倒れたのは貧血だろうということで、早速血液検査。
 結果はすぐに出た、全然基準値に達してない。鉄欠乏性貧血らしい。

 医者は顔をしかめていた。
 ためしに体育の授業のバドミントンはどうか聞いてみたら、「今は体力が落ちているし、走ることもダメだよ」と却下。「必要なら、診断書を書きましょうか」とも言われた。

 これがドクターストップか…初体験だ、とかまるで他人事のように冷静。所詮は貧血、されど貧血。
 無理をしてまで運動するつもりは、さらさらない。もともと運動音痴で好きじゃないし。一応、訊いてみただけで。

 診断書にはお金がかかるので、「先生にいるかどうか訊いてみます」と言っておいた。
 治療方針としては、錠剤投与では時間がかかるとのことで、週に2回通院して注射を打つことに。
 ──こうして、私はようやく家に着いた。




 お昼ごはんを済ませてひと段落すると、ふと須藤くんとの約束を思い出した。
 メモをカバンから出して、電話番号とメアドの登録する。…できた、登録完了。さっそく打とうかな。




     件名:小沢綾香です。
     ================
     今朝はありがとう。
     急に立てなくなって、困ってた時
     に須藤くんが助けてくれたから助
     かったよ。

     あの後病院に行ったらひどい貧血
     で、しばらく運動したらダメだっ
     てお医者さんに言われちゃった。

     注射を打って、明日からはまた学
     校に行けると思う。本当に今日は
     ありがとうね。




「まぁ、こんな感じでいいかな」
 …よし、送信っと。しばらく横になろっかな。



 ──ベッドに横になって、数分後。
「え?」
 携帯に表示されているのは、〔須藤惣一朗〕の文字。

(な、なんで須藤くんから電話がかかってくるの? どうしよう、どうしよう?)
 携帯を持って、一人あたふたしてしまう。

(せっかくかけてくれてるのに、出ないのはよくないよね…)
 気持ちを少しでも落ち着かせようと、深呼吸を2回。
 意を決して、通話ボタンを押す。

「…はい」
『小沢さん? メール読んだよ。あんまりよくないみたいだね、大丈夫?』
「少し休んだから、今はもう平気。ごめんね、迷惑や心配かけて」
『ううん、僕のことは気にしないで。平気って言うけど、ドクターストップかかったって…』
「一応は…でもまぁ、通院してあとは安静にしてれば治るから」
『そっか、早く治るといいね。…そういえば、佐藤さんたちも心配してたよ』
「由理ちゃんが?」
『小沢さんが貧血で倒れたって言ったら、皆でレバープレゼントしないとって』
「レバーって、普通プレゼントするものじゃないって! ていうか、私食べられないし。どうせプレゼントするなら、プルーンの方がまだいいよ」
 私のツッコミに、電話の向こうで須藤くんがくすりと笑った。いや、別に笑わそうと思ってた言ったわけじゃなくて、私は真剣なんだけど。

『…じゃあ代わりに伝えておこうか?』
「ううん、いいよ。実はプルーンもあんまり好きじゃないから」
『そうなんだ? …おもしろいね、小沢さんは』
「うーん、そう?」
 よく分からないなぁ。…あ、…あれ? 今気づいたけけど…私のメアドはメール送った時に分かったとして、電話番号教えてなかったはず…。

「そういえば私、須藤くんに番号教えてなかったよね? どうして分かったの?」
『あぁ…それはね。佐藤さんに「小沢さんのことが心配だから電話したいんだけど、電話番号教えてもらえないかな?」って言ったら教えてくれたよ』
「そうなんだ…」
 なんか後で追求がきそうな予感…。そんな不安を感じていたら、電話越しにチャイムの音が響いた。
『もっと話していたかったけど、もう授業が始まるみたい。残念だな』
「それじゃあ、この辺で。また明日学校でね」
『うん、またね』
 電話が終わって、また深呼吸。慣れないなぁ、こうやって男の子と話すのは。電話だと相手の顔が見れないから特にね…。


 私がまた寝ようとすると、今度はメールの着信音が鳴った。
 誰だろう、なんて思ってみたら、由理ちゃんからだった。




     件名:須藤くんから聞いたよー!
     ================
     今日貧血で倒れたんだって? し
     かもドクターストップ? もうびっくり
     したよー!(>_<)
     気をつけなよ〜、ホントに。

     …で、2人で結構長く一緒にいた
     みたいだけど、なにしてたの?

     しかも、あの須藤くんがわざわざ
     電話までしてくれるだなんて! 
     たよー!!

     明日詳しい話、聞かせてね〜楽し
     みにしてるから(^_-)-☆





「もう、由理ちゃんってば…」
 予感的中。てか、授業中になにやってんの…。先生に見つかっても知らないからね。

 別に特に話すことは…というか話せることはないんだけどなぁ……。――須藤くんに抱きついちゃったことは、絶対に内緒にしておかないと…。
 あれはハプニングだし! ワザとじゃないし!! ……あぁ、もう! 思い出しただけで、体温が上がってきちゃったじゃないの〜! もう寝て忘れよう、それがいい。
 私は頭から布団をかぶって、眠りについた。

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