最寄の駅までお母さんに迎えにきてもらい、そのまま病院に直行した。
私が倒れたのは貧血だろうということで、早速血液検査。
結果はすぐに出た、全然基準値に達してない。鉄欠乏性貧血らしい。
医者は顔をしかめていた。
ためしに体育の授業のバドミントンはどうか聞いてみたら、「今は体力が落ちているし、走ることもダメだよ」と却下。「必要なら、診断書を書きましょうか」とも言われた。
これがドクターストップか…初体験だ、とかまるで他人事のように冷静。所詮は貧血、されど貧血。
無理をしてまで運動するつもりは、さらさらない。もともと運動音痴で好きじゃないし。一応、訊いてみただけで。
診断書にはお金がかかるので、「先生にいるかどうか訊いてみます」と言っておいた。
治療方針としては、錠剤投与では時間がかかるとのことで、週に2回通院して注射を打つことに。
──こうして、私はようやく家に着いた。
お昼ごはんを済ませてひと段落すると、ふと須藤くんとの約束を思い出した。
メモをカバンから出して、電話番号とメアドの登録する。…できた、登録完了。さっそく打とうかな。
件名:小沢綾香です。
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今朝はありがとう。
急に立てなくなって、困ってた時
に須藤くんが助けてくれたから助
かったよ。
あの後病院に行ったらひどい貧血
で、しばらく運動したらダメだっ
てお医者さんに言われちゃった。
注射を打って、明日からはまた学
校に行けると思う。本当に今日は
ありがとうね。
「まぁ、こんな感じでいいかな」
…よし、送信っと。しばらく横になろっかな。
──ベッドに横になって、数分後。
「え?」
携帯に表示されているのは、〔須藤惣一朗〕の文字。
(な、なんで須藤くんから電話がかかってくるの? どうしよう、どうしよう?)
携帯を持って、一人あたふたしてしまう。
(せっかくかけてくれてるのに、出ないのはよくないよね…)
気持ちを少しでも落ち着かせようと、深呼吸を2回。
意を決して、通話ボタンを押す。
「…はい」
『小沢さん? メール読んだよ。あんまりよくないみたいだね、大丈夫?』
「少し休んだから、今はもう平気。ごめんね、迷惑や心配かけて」
『ううん、僕のことは気にしないで。平気って言うけど、ドクターストップかかったって…』
「一応は…でもまぁ、通院してあとは安静にしてれば治るから」
『そっか、早く治るといいね。…そういえば、佐藤さんたちも心配してたよ』
「由理ちゃんが?」
『小沢さんが貧血で倒れたって言ったら、皆でレバープレゼントしないとって』
「レバーって、普通プレゼントするものじゃないって! ていうか、私食べられないし。どうせプレゼントするなら、プルーンの方がまだいいよ」
私のツッコミに、電話の向こうで須藤くんがくすりと笑った。いや、別に笑わそうと思ってた言ったわけじゃなくて、私は真剣なんだけど。
『…じゃあ代わりに伝えておこうか?』
「ううん、いいよ。実はプルーンもあんまり好きじゃないから」
『そうなんだ? …おもしろいね、小沢さんは』
「うーん、そう?」
よく分からないなぁ。…あ、…あれ? 今気づいたけけど…私のメアドはメール送った時に分かったとして、電話番号教えてなかったはず…。
「そういえば私、須藤くんに番号教えてなかったよね? どうして分かったの?」
『あぁ…それはね。佐藤さんに「小沢さんのことが心配だから電話したいんだけど、電話番号教えてもらえないかな?」って言ったら教えてくれたよ』
「そうなんだ…」
なんか後で追求がきそうな予感…。そんな不安を感じていたら、電話越しにチャイムの音が響いた。
『もっと話していたかったけど、もう授業が始まるみたい。残念だな』
「それじゃあ、この辺で。また明日学校でね」
『うん、またね』
電話が終わって、また深呼吸。慣れないなぁ、こうやって男の子と話すのは。電話だと相手の顔が見れないから特にね…。
私がまた寝ようとすると、今度はメールの着信音が鳴った。
誰だろう、なんて思ってみたら、由理ちゃんからだった。
件名:須藤くんから聞いたよー!
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今日貧血で倒れたんだって? し
かもドクターストップ? もうびっくり
したよー!(>_<)
気をつけなよ〜、ホントに。
…で、2人で結構長く一緒にいた
みたいだけど、なにしてたの?
しかも、あの須藤くんがわざわざ
電話までしてくれるだなんて!
たよー!!
明日詳しい話、聞かせてね〜楽し
みにしてるから(^_-)-☆
「もう、由理ちゃんってば…」
予感的中。てか、授業中になにやってんの…。先生に見つかっても知らないからね。
別に特に話すことは…というか話せることはないんだけどなぁ……。――須藤くんに抱きついちゃったことは、絶対に内緒にしておかないと…。
あれはハプニングだし! ワザとじゃないし!! ……あぁ、もう! 思い出しただけで、体温が上がってきちゃったじゃないの〜! もう寝て忘れよう、それがいい。
私は頭から布団をかぶって、眠りについた。
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